導入事例

部品製造業

システム更新作業開始から、約3年間に及ぶ改修作業、データ入力修正、調整、確認を何度も繰り返し     お客様と一緒に、部門別損益計算機能を立ち上げました。

トップシステムプロダクツの生産管理システムSpeedyNeoを導入していただいた

山形県 株式会社長栄精密様のご要望機能「部門別損益計算機能」の立ち上げまでをご紹介いたします。

導入システム

  • 生産管理システムSpeedy Neo

お客様概要

企業名 株式会社長栄精密
所在地 山形県山形市
2020年導入 SpeedyNeo
加工内容 印刷機械部品、工作機械部品、建設機械部品

導入目的

  • 部門別損益集計
  • 経験と勘による引き当て、材料手配のシステム化

導入頂いたご要望機能のひとつ「部門別損益集計」の立ち上げに、代表取締役会長 柴田様、鹿野様、安達様、熊谷様、松田様をはじめ多くの方より、ご協力をいただきました。

今回は立ち上げまでに実際に苦労されたことを伺いました。

 

部門別損益は原価の把握ではない

導入の背景
  • 部門別損益集計機能をご要望になった背景にどんな問題があったのでしょうか?

柴田会長様:たとえば売上があがったのに利益が減ったのは何故?を解明しようとしてもその原因が財務会計ではわからないのです。

それを打破するためにお願いしました。損益の分岐点は4つあります。1.客先が減る場合2.人件費等の固定費が上がった場合3.材料費が上がった場合4.客先単価が下がった場合

これらのことはいままでの財務会計では、把握できない問題があり、財務会計に頼った経営ではダメだなぁと思っていました。社内の問題箇所(赤字部門とその原因)を見つけることと、得意先ごとの損益を算出することが重要と考えています。

柴田会長様

利益が出ていない得意先については、得意先と価格交渉し、合意出来ない場合は、付き合いをやめる、受注を断ることも必要です。

そうすることで、利益へつなげることができるのです。原価の視える化ではなく、付加価値額から人件費、減価償却費等の経費を差し引いたものを利益としてわかるようにしたい。

今回の要望は、原価の把握ではなく部門別損益の把握です。この考えをもとに、今回トップシステムプロダクツへ部門別損益集計機能をお願いしました。

 

トップシステムプロダクツとの認識の違いが発生

トップシステムプロダクツとの認識の違い

柴田会長様:今回のシステムでは、原価の把握ではなく、部門別と得意先別に売上を分解してみることができる機能をお願いしていましたが、トップシステムプロダクツでは、部門間の売り買い(アメーバ経営)の認識で進めていたようで、後に問題になりました。

具体的な内容については、当初の打合せ資料を見れば、わかるはずと思っていましたが、トップシステムプロダクツとのすり合わせが充分に出来ていなかったようです。

部門別損益集計では、加工実績から付加価値を集計することが目的で、部門間の売り買いとしては把握しない、この認識違いがあった。次工程を開始したら、前工程の実績が付加価値として計上される仕組みと伝えていたのですが・・・。

このことも、立ち上げまでに時間がかかった原因のひとつだと思っています。

出荷ベースで売上を按分するプログラムとしていましたが、それが間違いだった。柴田会長様は、実績ベースで次工程が着手(開始登録時)したら部門ごとの付加価値を計上するイメージでした。

 

認識違いがあった原因とその後の対応について

TSP担当 長崎:当初は、実績から売上を集計するプログラムを作成していましたが、実績入力の定着まで時間がかかり、初めから実績から売上を集計しても、正確な値を集計することができませんでした。そのため、納品から売上を集計するように、プログラムを修正しました。その後、現場の人の実績入力が定着したため、実績から売上を集計するように再度プログラムを修正し、正確な値で集計結果が求められるようになりました。

     TSP 長崎 

 

導入効果、赤字原因が明確になった

  • 部門別損益集計機能でどんな効果がありますか?

柴田会長様:部門別に集計することで、赤字の原因箇所がわかるようになりました。例えば組立部門では、材料や部品のピッキング工程を無視した単価設定をしていたことがわかりました。

導入前は、手探りだったことが、部門ごとに集計することで原因となる部門や工程がわかるようになりました。何度も言いますがこの機能は、原価の把握ではなく部門別損益の把握です。

お客様ごと、部門ごとに分けて集計することで、良いところと悪いところが見えるようになったのです。

 

  • 材料手配のシステム化については?

柴田会長様:棚卸が、現場に出向かなくても画面上で材料、仕掛品等把握できるようになったことが大きいです。担当の安達も現場へ走らなくてもよくなったと聞いています。

 

テストパターン192通りを実施

  • 部門別損益集計の認識違いを含め立上げまで3年かかりましたが、その他どんな苦労がありましたか?

熊谷様:プログラム納品後にいろんな入力を想定しテストしました。実務を想定しながら約192通りのテストパターンを行いましたが、やっていくうちに、こんなパターンもあるのではないかと、どんどん増えていき大変でしたね。なかには、不具合でテストできない時もあり、その度にトップシステムプロダクツ担当の長崎さんへ連絡し、対応してもらいました。本稼働までは、本当に大変でした。

熊谷様                    松田様                                            安達様  

松田様:自分たちの意図がトップシステムプロダクツへ伝わらず、確認作業の度にやり取りが必要で大変でした。

 

鹿野様:納品してもらったプログラムですが、色々な業務パターンを想定して操作してみると不具合が結構あり、納品前のプログラムテストを本当にやっているのかなと不安になりましたね。

多角的な視野で業務パターンを想定してシステム構築いただいていると思いますが、こちらの要望を100%理解して、要望通りの合致するものを構築するのは、難しいところもあると思います。

例えば工数の単位や表示のしかたを「時間」で見たいと思っていても、システムでは、分単位が標準仕様のため、時間表示にされていなかったり等、製造業側とシステム開発側との間で、物ごとのとらえ方のギャップや伝え方の難しさを感じましたね。

あとは、経営者の目的とする集計結果を我々もイメージできていなかったところも立上げまで時間がかかった原因かなとも思っています。

鹿野様

弊社も今回の経験から、システム導入において、経営者と管理者、現場作業者によるシステム導入の目標の意識合わせが大事だと痛感しました

 

現場へ浸透しない80台のスマートフォン実績入力

  • 部門別損益集計には、作業者による実績入力が必須ですが現場での実績入力を定着させるまでの苦労があったと思います。

熊谷様:最初は、実績入力の必要性を作業者が感じていなかった為、浸透しませんでした。理由は、「面倒だからやらない」、「まとめて入力すればいい」、「他の人に頼んで入力してもらう」等で、入力されていた工数は、あきらかにおかしいものが多くありました。

他には、入力間違いの修正手順を生産管理課へ聞いてくるのですが、なかには一度聞いた説明をまた聞くのは申し訳ないと思っている人もいて、入力しなくなる場合もあったようです。

 

松田様:生産管理課としては、実績集計することで、明らかにおかしい工数がわかるので、リーダを通して指導をお願いするのですが、リーダの人も必要性を理解していないため、意図が伝わらず現場へはなかなか浸透しなかった。しかし、部門別損益集計で各部門の成績が見えるようになり報告会議で発表することで、リーダの人も必要性を理解した上で、現場作業者へ入力目的を伝えるようになり、浸透していったようです。

 

各部署で行われるスマートフォンによる実績入力

松田様:マスタつくりのため、現場へ工程構成情報をまとめてもらうよう依頼しましたが、なかなか上がってきませんでした。実績入力の必要性を感じていないためだと思います。

実績入力を定着させるために、10人単位で、講習会を開いたり、部門別損益集計が人事に関わってくることを説明したり指導しましたが、それでも手書き記入の日報から離れない作業者もいましたね。強行手段ですが、この日からスマートフォン実績入力のみで行う期日を決め進めました

結局スマートフォン実績入力の定着には、3年位かかりましたね。

ですが、今回のSpeedy導入を機会に、スマートフォン実績入力用端末に触れることで社内のデジタル化が進みチャットツールを介した情報共有が盛んになった副産物もあります。

実際にシステム稼働して分かったことが多数。現場の実績データを修正する日々

 

導入から3年、部門別損益集計機能立上げ。これからの効果に期待

  • 不具合も改修し、いよいよ立上げとなりました。効果を具体的にお聞かせいただけますか?
部門別損益集計の効果
利益がない得意先と製品が把握できるようになった

柴田会長様:部門別と得意先様ごとの損益が見えるようになり、利益が出ていない製品について、得意先様と価格の交渉ができるようになった。

社内原因の特定

熊谷様:社内の赤字原因の工程(部門)を見つけることができた。例えば組立工程で行っている、ピッキング作業の工数を含めないで、単価を設定していたことが

わかった。ピンポイントで改善箇所がわかるようになりました。

材料手配のシステム化の効果
画面上で材料在庫、棚卸数の確認

安達様:在庫品についても画面上で、どこに、どれくらいの材料があるのか、在庫数や、仕掛在庫数がわかるようになり、現場へ出向く手間がなくなった。

 

システムにおける今後の課題

  • ようやく本稼働した今回のシステムで今後課題はありますか

安達様:材料手配の都合で、入荷した分から指示書を分割して現場へ流すのですが、現場では、分割した分だけ実績入力しなければならない手間が発生する等の意見があり、今後改善していきたいと思っています。

  • トップシステムプロダクツへの今後の期待などあればお願いします。

鹿野様:昨今の経済状況から、よく聞くのが、導入したシステム業者がなくなり、メンテナンスできなくなって困っている等聞くのですが、トップシステムプロダクツさんとは、長いお付き合いができるように、今後も効率化、省力化等含めたDX化のご提案を期待しています。

 

弊社のシステムは、これからもブラッシュアップし進化していきます。

今回の課題も一緒に考え、長栄精密様の業務にあった、より使いやすいシステム構築を行っていきたいと思います。